2012年3月28日水曜日

昭和村公民館主催:古文書『公私摘要』を読む(1)


平成23年度 昭和村公民館:生涯学習講座・地元学のすすめ
古文書『公私摘要 戊辰中編』を読む 第1回

2012年3月27日(火)晴れ、13時30分から15時42分
昭和村公民館和室 参加者26名
記録:文責 菅家博昭

主催者昭和村公民館あいさつ:皆さん、こんにちは。今日はほんとうに大勢の皆さんにおいでいただきありがとうございました。
   今日は生涯学習講座の地元学のすすめ「古文書:『公私摘要』を読む」、古文書の講座をご案内いたしました。内容につきましては、『公私摘要』と申しまして、大芦出身の星甚恵先生が会津史学会の『歴史春秋』第57号(2003年)に書かれた内容をレジュメのほうに記載紹介いたしました(星甚恵「栗城義綱 公私摘要初編について」)。
  嘉永五年(1852)から、明治四十二年(1909)の七月まで、現在の昭和村にあたる地域内の動きをまとめたものです。全部で六冊あります。著者は当時の小中津川村の名主の栗城義綱(浜三)さんで、現在、小中津川折橋に子孫がお住まいです。
『公私摘要』は各種の論文に引用、紹介されていますが、昭和村で本書を学ぶ会を開催するのは今日がはじめてです。本日は6冊あるなかの2冊目、戊辰中編を学びます。
 昨年は『昭和村の歴史2 昭和村の歩み』(昭和村発行、2011年)を編纂、発刊しました。昭和四十八年に発刊した『昭和村の歴史』(昭和村役場、1973年)以後にあたる部分を、各集落で聞き取りなどを行いまとめました。そのなかで、もう少し地域の歴史、村の歴史に目を向けながら、地域を深く理解することが必要ではないか?と感じていました。そうしたことから本日の勉強会を企画いたしました。
 今回は会津戊辰の役の時代が大きく動く時に、昭和村地域ではどのような動きをしていたのかを『公私摘要』から学びます。
本日の講師、三島町の桧原にお住まいの海老名俊雄先生を紹介します。学校の教員を永く務められ、現在会津史学会の顧問、同会の古文書講座の講師をされています。海老名先生は「『公私摘要』は、ほんとうに地方の史料としては一級品である」と申され今回の講師を引き受けていただきました。
 また海老名先生は、星甚恵先生の師匠にもあたります。なお本日は参加者が多く、準備した資料が不足しており、いま作成していますので後に入室された方の分はすぐお渡しいたします。では海老名先生お願いいたします。




海老名俊雄先生:
 皆さん、こんにちは。海老名俊雄と申します。
私が『公私摘要』に出会ったのは会津若松市です。昭和四十八年に『昭和村の歴史』が発行されました。それの編集著作に関係した歴史の先生方が実は『公私摘要』を昭和村での史料調査のなかで発見して、それを複写されたのを持っておられました。それで、星甚恵先生は大塚実さんから借りて読まれました。もう一人、後に会津若松市教育長になられた酒井淳さんですが、『昭和村の歴史』編纂にもかかわっておられ、『公私摘要』の写しを持っておられました。これをテキストにして会津史学会の古文書講座で勉強したらどうか?ということになり、私が担当して勉強を進めました。なかなか、中味が地方の単なる日記ではなくて、歴史的な考察とか史料になるということがわかりました。栗城義綱さんは、いろいろ考えて『公私摘要』を書かれており、立派な本で、これはただ古文書学習のためのテキストとして読むだけではなく、内容を研究して論文として残しておこうと、思いまして、私たちは取り組みました。
 会津史学会の『歴史春秋』という雑誌に書いたものを皆さんの手許に本日資料としてお渡ししています。
 「会津戊辰戦争と一山村の動向」(正・続)として二回の連載として、『公私摘要』からわかることを『歴史春秋』(1997年第四十五号、1998年第四十八号)に私が書いたわけです。
 『公私摘要』を読んで、最初に論文に引用された学者は福島大学の庄司吉之助先生です。本日、後でお話する「ヤーヤー一揆」のところを取り上げて、書かれ論文を発表され学会でもたいへん話題になりました(庄司吉之助『世直し一揆の研究』1970年)。
しかし実際に原本である『公私摘要』を読んでみると庄司先生の書かれたものとに違いがありました。それでこれについても学会で論争になりました。原本がどうなっているかが重要です。それは先に言っておきますと、庄司先生は、「明治元年の十月三日、西山の五畳敷でヤーヤー一揆がはじまり、二千人が集まった」というふうに書かれています。しかし『公私摘要』原本を読むと二十人となっていました。いまは二十人というのが正しいということが確定しています(大塚実「会津に於ける世直し騒動発生再考」『歴史春秋』第43号、1996年)。そういうことがあったため、私が本を書いた次の次の年に明治維新史学会が会津若松市内で開催され、『公私摘要』を読むということで発表してもらいたいと依頼があり、県立博物館で発表しました。学会の貴重な史料になったと評価されました。


 昭和四十八年に発刊された『昭和村の歴史』には『公私摘要』はほんの少ししか紹介されていません。それは限られたページ数の関係とか当時の事情によるのでしょう。
 しかし、今回、『公私摘要』が地元の皆さんで読み解かれていく。そうしたことができたらほんとうにうれしい、ということで星甚恵先生さん等と話しをしたのですが、なかなかそういう機会がありませんでした。今回ここで皆さんと一緒に栗城義綱さんの書かれた貴重な記録を読んでいくということをたいへんうれしく思いましてこころよく引き受けました。いろいろあるかと思います。「字を読む」ということになりますので、なかなか簡単ではないかもしれませんが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 私としては、戊辰の戦いと新政の推移を『公私摘要』に見るということで話しをしていきます。
まず、このテキストに従って見ていきます。

『公私摘要』二冊目 「戊辰」1ページ目(A3版21枚、A4版42ページ分量)

八十里口(はちじゆうりくち)、御(お)繰込(くりこみ)相成(あいなり)候(そうろう)、諸藩(しよはん)之(の)覚(おぼえ)

先(さき) 繰込(くりこみ) 上通(うわどおり)

松本
御親兵 長州
薩州   之由(のよし) 申伝候(もうしつたえそうろう)
加州
松代
尾州

後(あと)
上田
小濱
飯田
飯山
須坂
水戸
高崎
高遠
富山
高田 新発田 勢少々                 以上

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以下、資料について、先生が翻刻・音読、解説されていく。









■海老名俊雄先生は2010年に、三島町のいまここネットでも「参宮道中記」の講演されています。