2009年3月29日日曜日

床下で山草で作る、、、火薬の材料・焔硝(えんしょう)

床下で作る、、、火薬の材料・焔硝(えんしょう)
■馬路泰蔵編『知られざる白川郷~床下の焔硝が村を作った』(風媒社、2009年1月刊)

 この3月、富山県庄川流域を訪ねた。一向一揆の拠点寺院があり、合掌造りの五箇山がある。信長と教団の長い争乱のなかで、火薬原料の焔硝(えんしょう)と、兵士を提供している。

 帰郷後、いくつか文献を調べいきあたったのが、表題の本。

 庄川の最上流は岐阜県の白川郷。2002年、茅葺きの合掌家屋の床下の土を化学分析を行った著者らは、江戸時代に火薬の原料である焔硝(硝石)を人尿、蚕糞、野草などを原料とし、土壌微生物の働きを利用して作っていたことを『床下からみた白川郷~焔硝生産と食文化から』(風媒社)で、明らかにした。

 庄川流域は急峻な山に囲まれた白川郷から五箇山までの地域で、こうした焔硝が生産され、古い文書も、問屋の存在も明らかにされている。ここの経済拠点は庄川下流で平地に出たところの富山県南砺市城端町の越中城端(じょうはな)。五箇山は江戸時代は加賀藩の流刑地。そのさらに上流に白川郷がある。火薬生産の軍事秘密を守るためにこうした山峡の地が存在したとしています。

 火薬は1866年にノーベルが発明したダイナマイトが有名ですが、江戸時代までの火薬は黒色火薬で、硝石、硫黄、炭粉で作られます。

 五箇山の焔硝は1570年~80年に起こった石山合戦の時に、大坂石山本願寺に残らず納められたこと、北陸一向一揆においても1573年に五箇山から焔硝が送られたことが記されてる(15ページ)。

■注目しているのは焔硝生産に使う山草・野草の存在で、アカソ、イタドリ、シシウド、ウド、クロバナヒキオコシに含まれるカルシウムが焔硝生産に利用されていることです。そのほか栽培植物のヒエ、キビ、ソバの茎葉とタバコの茎が利用されています。特に衣料原料でもあるアカソのカルシウム含量は多い。硝石のチッソ源としてだけではなく、硝化菌の働きを高めるカルシウム源として重要であった。土と、草と、尿で床下で切り返しをしながら4年ほどで焔硝原料ができ、それを精製していく。堆肥を床下で作る、というような作業である。それは雨を避けることで硝石ができる。

 合掌造りは蚕を飼う、その糞(蚕糞)を硝石原料に添加して利用している。そして、山国の山草・野草を使う。