■尾関清子『縄文の衣 日本最古の布を復元』(学生社、1996年)。編布(アンギン)、これもカラムシに関わる人々は必ず読まなければならない書籍である。246ページ、2200円。遺跡出土の繊維分析は布目順郎氏(故人)の著作が多く、それらにも昭和村のカラムシ類は紹介されている。またいわき市出身の名古屋大学の渡辺誠氏の研究もある。生活文化史専攻の尾関氏はそれらの成果を踏まえて布の復元とともに道具の復元を行っている。
本書には昭和村の隣村の福島県大沼郡三島町の荒屋敷遺跡(縄文晩期~弥生)で出土した繊維製品と、その解析、復元が試みられている。縄文晩期の編布が出土しているが、その他に用途不明の作成物があり、尾関氏はケタであろうとし「荒屋敷編具」(84ページ)を復元している。
こうした編具、編布の復元のなかで96ページで紹介されているように、
カラムシの生産地である福島県大沼郡昭和村大芦の五十嵐スイ子さん(2011年没)に遺跡から出土した編布と同じ諸撚り(左)の太さ0.6~1mmまでの何種類もの糸を依頼している。スイ子さんは「たいへん難しかった」と言われている。232ページの表5にも掲載。
■221ページには昭和村のカラムシ会館、その菅家長平館長という表現が出て来るが、誤り。当時、菅家長平氏は昭和村公民館長であり、カラムシ会館の館長では無い。
■民族文化映像研究所が1988年に製作した『からむしと麻』には福島県大沼郡昭和村大芦の五十嵐スイ子さん・初喜さん夫妻がカラムシ生産を、同村大岐の菅家トシ・清一・ミヨ子がアサについての生業を姫田忠義監督が記録している。
■現在、福島県昭和村佐倉に村営の「からむし工芸博物館」がある。