■地球研ライブラリー17『焼畑の環境学 いま焼畑とは』が京都の思文閣出版から2011年10月17日に刊行された。監修は佐藤洋一郎、編者は原田信男・鞍田崇。定価9000円、586ページと厚い本。
総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「農業が環境を破壊するとき ユーラシア農耕史と環境」で取り組まれた焼畑研究である。あとがきから経緯を紹介すると、
1万年前から現在にいたる農業活動と自然環境の相関性をひもとき、将来の農業の姿を考える手がかりを探ることを目的としたもの。化学肥料を用いず、循環的な土地利用を原則とする伝統的な焼畑は、自然共生型で低エネルギーを旨とすべき今後の農業の方向性を検討するうえで「火耕」は重要と位置づけられ、その現代的意義を探った。
「火耕」は、農業技術としての焼畑だけが問題ではなく、その社会的・歴史的意義や、焼畑を要とした民俗を包括的に把握しようとした。また農業技術として考える場合も、食料生産だけでなく、衣料作物(たとえばカラムシ)や建材作物においても、火入れを用いた生産が行われてきており、「火」による自然管理に根ざした生活文化がある。
各地で講演会等が行われ、会津では焼畑のカブが取り上げられ、からむし焼きの昭和村の関連でいうと、赤坂憲雄・佐々木長生・姫田忠義。特に2008年11月16日に山形県鶴岡市で開催された「焼畑サミットin鶴岡 焼畑と野焼きの文化」では、1988年に民族文化映像研究所が制作した「からむしと麻 福島県大沼郡昭和村大芦・大岐」が上映され、カラムシ焼きが検討された。解説は昭和村からむし生産技術保存協会長の星為夫さん(大芦在住)。
本書には、からむし工芸博物館の平田尚子さんが「繊維植物栽培における火耕 福島県昭和村のからむし焼き」(48ページから75ページ)を寄稿している。
■ → 思文閣出版
目次
総説 佐藤洋一郎(総合地球環境学研究所副所長・教授)
総説 佐藤洋一郎(総合地球環境学研究所副所長・教授)
焼畑の原像と衣食住
縄文残映――焼畑農耕―― 小山修三(国立民族学博物館名誉教授・吹田市立博物館館長)
繊維植物栽培における火耕――福島県昭和村のからむし焼き―― 平田尚子(からむし工芸博物館)
椎葉の焼畑と食文化 飯田辰彦(ノンフィクション作家)
茅葺き民家を支えるヨシ原の火入れ 大沼正寛(東北文化学園大学准教授)
縄文残映――焼畑農耕―― 小山修三(国立民族学博物館名誉教授・吹田市立博物館館長)
繊維植物栽培における火耕――福島県昭和村のからむし焼き―― 平田尚子(からむし工芸博物館)
椎葉の焼畑と食文化 飯田辰彦(ノンフィクション作家)
茅葺き民家を支えるヨシ原の火入れ 大沼正寛(東北文化学園大学准教授)
焼畑像をめぐって
会津農書からみる火耕 佐々木長生(福島県立博物館専門員)
近世農政家の焼畑観――対馬の陶山鈍翁を中心に―― 原田信男(国士舘大学21世紀アジア学部教授)
近代林学と焼畑――焼畑像の否定的構築をめぐって―― 米家泰作(京都大学文学研究科准教授)
新しい農学授業と地域興しとの連携 山口 聰(玉川大学教授)
[コラム1](再録)山焼きの民俗思想――火を介した自然利用の方法の現代的可能性をめぐって―― 六車由実
会津農書からみる火耕 佐々木長生(福島県立博物館専門員)
近世農政家の焼畑観――対馬の陶山鈍翁を中心に―― 原田信男(国士舘大学21世紀アジア学部教授)
近代林学と焼畑――焼畑像の否定的構築をめぐって―― 米家泰作(京都大学文学研究科准教授)
新しい農学授業と地域興しとの連携 山口 聰(玉川大学教授)
[コラム1](再録)山焼きの民俗思想――火を介した自然利用の方法の現代的可能性をめぐって―― 六車由実
日本と周辺の焼畑
蝦夷地における近世アイヌの農耕 山田悟郎(北海道開拓記念館学芸員)
カブと焼畑――山形県を中心に―― 江頭宏昌(山形大学准教授)
四国山地の限界集落における焼畑と文化環境 橋尾直和(高知県立大学教授)
沖縄における焼畑 宮平盛晃(沖縄国際大学非常勤講師)
台湾原住民における焼畑 山田仁史(東北大学准教授)
[コラム2](再録)昭和一八年の山口弥一郎の牛房野調査に関して 六車由実
蝦夷地における近世アイヌの農耕 山田悟郎(北海道開拓記念館学芸員)
カブと焼畑――山形県を中心に―― 江頭宏昌(山形大学准教授)
四国山地の限界集落における焼畑と文化環境 橋尾直和(高知県立大学教授)
沖縄における焼畑 宮平盛晃(沖縄国際大学非常勤講師)
台湾原住民における焼畑 山田仁史(東北大学准教授)
[コラム2](再録)昭和一八年の山口弥一郎の牛房野調査に関して 六車由実
アジアとアフリカの焼畑
南九州とラオス北部の竹の焼畑―森の再生と持続可能な農耕―― 川野和昭(鹿児島県歴史資料センター黎明館学芸専門員)
ラオス北部地域にみる焼畑の終焉とイネ遺伝資源の消失 武藤千秋(京都大学農学研究科技術補佐員)・佐藤雅志(東北大学准教授)
なぜ、アフリカの焼畑なのか 佐藤廉也(九州大学大学院准教授)
登って枝を打つか、地上で切り倒すか――ザンビア北東部・ベンバの焼畑造成―ー 岡 惠介(東北文化学園大学教授)
養分動態からみた焼畑の地域比較論 田中壮太(高知大学准教授)
南九州とラオス北部の竹の焼畑―森の再生と持続可能な農耕―― 川野和昭(鹿児島県歴史資料センター黎明館学芸専門員)
ラオス北部地域にみる焼畑の終焉とイネ遺伝資源の消失 武藤千秋(京都大学農学研究科技術補佐員)・佐藤雅志(東北大学准教授)
なぜ、アフリカの焼畑なのか 佐藤廉也(九州大学大学院准教授)
登って枝を打つか、地上で切り倒すか――ザンビア北東部・ベンバの焼畑造成―ー 岡 惠介(東北文化学園大学教授)
養分動態からみた焼畑の地域比較論 田中壮太(高知大学准教授)
史料論
中日火耕・焼畑史料考 原田信男
白山麓一八ヶ村とむつし関係史料について 山本智代(錦城学園高等学校教諭)
中日火耕・焼畑史料考 原田信男
白山麓一八ヶ村とむつし関係史料について 山本智代(錦城学園高等学校教諭)
附録DVD
白山麓一八ヶ村村絵図集 山本智代
焼畑関係文献目録 江頭宏昌・米家泰作・原田信男
白山麓一八ヶ村村絵図集 山本智代
焼畑関係文献目録 江頭宏昌・米家泰作・原田信男
あとがき 原田信男・鞍田崇(総合地球環境学研究所准教授)