2012年1月26日木曜日

焼畑の環境学(からむし焼きも、、、)


■地球研ライブラリー17『焼畑の環境学 いま焼畑とは』が京都の思文閣出版から2011年10月17日に刊行された。監修は佐藤洋一郎、編者は原田信男・鞍田崇。定価9000円、586ページと厚い本。
 総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「農業が環境を破壊するとき ユーラシア農耕史と環境」で取り組まれた焼畑研究である。あとがきから経緯を紹介すると、
 1万年前から現在にいたる農業活動と自然環境の相関性をひもとき、将来の農業の姿を考える手がかりを探ることを目的としたもの。化学肥料を用いず、循環的な土地利用を原則とする伝統的な焼畑は、自然共生型で低エネルギーを旨とすべき今後の農業の方向性を検討するうえで「火耕」は重要と位置づけられ、その現代的意義を探った。
 「火耕」は、農業技術としての焼畑だけが問題ではなく、その社会的・歴史的意義や、焼畑を要とした民俗を包括的に把握しようとした。また農業技術として考える場合も、食料生産だけでなく、衣料作物(たとえばカラムシ)や建材作物においても、火入れを用いた生産が行われてきており、「火」による自然管理に根ざした生活文化がある。
 各地で講演会等が行われ、会津では焼畑のカブが取り上げられ、からむし焼きの昭和村の関連でいうと、赤坂憲雄・佐々木長生・姫田忠義。特に2008年11月16日に山形県鶴岡市で開催された「焼畑サミットin鶴岡 焼畑と野焼きの文化」では、1988年に民族文化映像研究所が制作した「からむしと麻 福島県大沼郡昭和村大芦・大岐」が上映され、カラムシ焼きが検討された。解説は昭和村からむし生産技術保存協会長の星為夫さん(大芦在住)。
 本書には、からむし工芸博物館の平田尚子さんが「繊維植物栽培における火耕 福島県昭和村のからむし焼き」(48ページから75ページ)を寄稿している。
■ → 思文閣出版
 
目次
総説 佐藤洋一郎(総合地球環境学研究所副所長・教授)
焼畑の原像と衣食住
縄文残映――焼畑農耕―― 小山修三(国立民族学博物館名誉教授・吹田市立博物館館長)
繊維植物栽培における火耕――福島県昭和村のからむし焼き―― 平田尚子(からむし工芸博物館)
椎葉の焼畑と食文化 飯田辰彦(ノンフィクション作家)
茅葺き民家を支えるヨシ原の火入れ 大沼正寛(東北文化学園大学准教授)
焼畑像をめぐって
会津農書からみる火耕 佐々木長生(福島県立博物館専門員)
近世農政家の焼畑観――対馬の陶山鈍翁を中心に―― 原田信男(国士舘大学21世紀アジア学部教授)
近代林学と焼畑――焼畑像の否定的構築をめぐって―― 米家泰作(京都大学文学研究科准教授)
新しい農学授業と地域興しとの連携 山口 聰(玉川大学教授)
[コラム1](再録)山焼きの民俗思想――火を介した自然利用の方法の現代的可能性をめぐって――  六車由実
日本と周辺の焼畑
蝦夷地における近世アイヌの農耕 山田悟郎(北海道開拓記念館学芸員)
カブと焼畑――山形県を中心に―― 江頭宏昌(山形大学准教授)
四国山地の限界集落における焼畑と文化環境 橋尾直和(高知県立大学教授)
沖縄における焼畑 宮平盛晃(沖縄国際大学非常勤講師)
台湾原住民における焼畑 山田仁史(東北大学准教授)
[コラム2](再録)昭和一八年の山口弥一郎の牛房野調査に関して 六車由実
アジアとアフリカの焼畑
南九州とラオス北部の竹の焼畑―森の再生と持続可能な農耕―― 川野和昭(鹿児島県歴史資料センター黎明館学芸専門員)
ラオス北部地域にみる焼畑の終焉とイネ遺伝資源の消失 武藤千秋(京都大学農学研究科技術補佐員)・佐藤雅志(東北大学准教授)
なぜ、アフリカの焼畑なのか 佐藤廉也(九州大学大学院准教授)
登って枝を打つか、地上で切り倒すか――ザンビア北東部・ベンバの焼畑造成―ー 岡 惠介(東北文化学園大学教授)
養分動態からみた焼畑の地域比較論 田中壮太(高知大学准教授)
史料論
中日火耕・焼畑史料考 原田信男
白山麓一八ヶ村とむつし関係史料について 山本智代(錦城学園高等学校教諭)
附録DVD
白山麓一八ヶ村村絵図集 山本智代
焼畑関係文献目録 江頭宏昌・米家泰作・原田信男
あとがき 原田信男・鞍田崇(総合地球環境学研究所准教授)