2012年4月20日金曜日

老翁茶話(1)・福島県立博物館・木曜の広場


■2012年4月19日(木) 会津若松市内の城東町にある福島県立博物館で、新年度の木曜の広場が午後1時30分から講堂で行われた。毎月1回開催される。次回は5月17日(木)。館長の赤坂憲雄さん、学芸員の佐々木長生さん(日本民俗学)と川延安直さん(絵画担当)。

 『老媼茶話』(ろうおうさわ)は江戸時代・寛保2年(1742)に会津の浪人・三坂大弥太(だいやた)春編(はるよし)が選んでまとめた奇談集で、幽霊・妖怪・狐・蛇など特に会津のものが多くある。明治時代に柳田国男・田山花袋により続帝国文庫『近世奇談集』に収録され、柳田の『遠野物語』にも大きな影響を与えた。これを1年間を通じて読む。
 佐々木さんが準備したテキストA3版6ページを解説。赤坂さんが質問しながら講座は進められた。会津若松市のミニコミ誌『会津嶺(あいづね)』に2009年4月号から25回ほど連載された現代語への翻刻をした川延さんも語った。その挿絵の玉川岩男さんも、会場から絵の意味を語られた。
 会津の近世の絵師・遠藤香村の図録編集等のための調査研究のなかで川延氏は香村が残した2種のメモ集に奇談が多く掲載されていること等を知り、会津若松市立・会津図書館で蔵書検索をしたところ奇談集としての『老媼茶話』筆写本を見つけ、それを読み下し、現代語に置き換えた、という。
 佐々木さんは昨年の遠野物語を学ぶなかで、柳田らが読んだ『老媼茶話』を含め様々な写本が存在すること、古書(16巻本)を新たに昨年求めて、現在読み進めていることを紹介し、『老媼茶話』について現在まで知りえたことを、近刊の『遠野学』創刊号(遠野文化研究センター刊、所長赤坂氏)に寄稿していることを語られた。『老翁茶話』というものもあることも紹介された。
 ※次回は5月17日(木)で、猪苗代の山姥(やまんば)や天狗について学ぶ、という。前年度学習した『遠野物語』(本)も持参するよう求めている。同じような事例があることを紹介する、という。(未完、この後に継続執筆)
 ※茶話、とは茶飲み話。
■地域文化論として、重要な示唆を得る会合であった。特に、赤坂さんは、「物語のある風景を持つ地域は、文化的に豊かで、旅人からも魅力ある土地である」という発言と、「物語があると、風景が立ち上がる」という言及。
 かすみ草の苗植えを早朝よりやりおえて、ようやく開催時間に間に合った。聞き応えがあり、人間と記憶、人間と自然・生物の境界など、考えなければならないことが、また多くわき出てきた。講座のなかでふれた『遠藤香村展示図録』(福島県立博物館、2008年、1500円)を求めてきた。
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左より川延学芸員、佐々木さん、赤坂さん

■赤坂さん監修の朝日新聞福島県版金曜連載の「会津物語」を、赤坂さんの指名で、渡辺紀子さん27話、菅家が28話を、1話ずつ朗読した。


2012年4月14日土曜日

小中津川 善六麻


■4月12日(木)福島市、福島県立図書館。



庄司吉之助「幕末に於ける土地集積-商業的農業と金納小作料について-」
『東北経済』3号、1950年11月10日  福島大學東北經濟研究所


資料1)文久二年(1863)十月(伊南郷馬場文書)
金山谷 小中津川 善六麻
九月 多助参り候て 金十両渡し頼み置候、其後、多助荷造に参候節
川島九吾参り候て 買訳に相極め、右買訳の分 五郎口に売る。
一、麻三十一ヶ二つわり 二、四、五、天目十八、天天十三、天十一(品目)
  代金 百四十九両一分三百三十九文 外に二分八〆五十二文(作りとりなら立)
  三朱他太助二度行 一分一朱同人手間
一、三五、金四十五両二分 一〆二十五束 三十五ヶ代
  引合金二両二朱五百十四文利 外に二両二分利足 是は右人ともよき利
  〆金 四両二分五利に相成候


資料2)明治二年(1869)南会津伊南、金山谷両郷物産移出量
一、伊南、伊北谷(但し古町、和泉田、黒谷、大塩)
  此高 一万八千七百余石 家数二千五百十三戸 人別九千五百五十四人
一、金山谷(但し大石、滝谷、大谷、野尻)
  此高 一万千四百九十三石九斗三升一合
  家数千九百八十五戸 人別一万九百七十三人
両谷合 二万四千百九十三石九斗三合一升 家数四千三十八戸 人別二万七百二十六人
  此所入用見込
米 四千二百俵 坂下、高田、若松より買入米凡二万九千両
塩 三千俵  一人六升積 凡九千両也
木綿其外日用品々 二万五千両
御上納金並本途拝借金 凡三千二百両
合 六万千四百両




資料3)明治三年(1870)十一月 伊北村金山谷生産分局事件留記(含む野尻組)
生産出来金大則
生糸 百箇 凡三万両 一箇三百両積
麻 千五百箇 九百両 一箇六両
新かた出し筏 二百五十拜 凡三千両
紫蕨 五百 千二百五十両
五郎丸御上下地千疋 三千両
伊北晒 二十二箇 千両
友助 千疋 八百両
細布 千疋 七百両
蚊帳地 千五百疋 千二百両
西方紙 千両
青苧 三百箇 一万両
あせとり地其他 七百五十両
小羽板の外木地等山材類 千両
〆六万五千七百両


  65700両-61400両=4300両

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■下の見る・開くで書籍PDFが読める。32ページ(16ページ)に小中津川村善六麻。文久二年(1862) → 庄司吉之助 幕末に於ける土地集積
■ 南会津の今と昔 → 南会津生活記(2012年)

考える人・山折哲雄氏連載「柳田国男、今いずこ」


■2012年4月13日に書店より求めた本に新潮社の季刊雑誌『考える人』40号(2012年春号、5月4日発行)。
 39号より山折哲雄氏が「柳田国男、今いずこ」を連載している。第2回目の今号は「『山の人生』に描かれた偉大なる人間苦」で、読みごたえのある論考である。
 『山の人生』は『遠野物語』の注釈・頭注・脚注である、、、という指摘。本居宣長の古事記の注釈に通じる。
 究明できない日本人観、司馬遼太郎の高田屋嘉兵衛の生涯を追った『菜の花の沖』を事例に引いている。

山の民・川の民


■2012年4月13日(金)曇り
 昨日は隣集落の琵琶首で葬儀があった。3月下旬に続き2件目。大岐は行き来(通婚圏)があるため見舞いに行った人も多い。
 今日の朝日新聞福島県版に掲載された会津物語28は旧・南郷村の故・月田茂さん(明治45年生まれ)に1986年3月17日に茂さんの自宅で聞いた話。南郷村史の縄文時代の遺物調査時のことで、月田農園の開拓で縄文早期の土器が出土していたので訪問した。茂さんは、禮次郎さんの父親。26年前に聞いた話。pdf → 行人岩と経塚
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■2007年に赤坂憲雄氏の文庫版解説が巻末に掲載されている ちくま学芸文庫、井上鋭夫『山の民・川の民 日本中世の生活と信仰』は1981年に平凡社選書として刊行された。
 この本への批判は、『季刊 東北学』第5号(柏書房、2005年)で、谷川健一「日本民間信仰史研究序説2」で「山の民・川の民 井上鋭夫批判を中心に」(231から251ページ)。

2012年4月3日火曜日

ACF福島学シリーズ1「地域を知る 地域に学ぶ 福島学総論」


地域を調べる 地域に学ぶ

■福島大学 3月15日発刊。福島学ブックレットが届いた。
 ACF福島学シリーズ1「地域を知る 地域に学ぶ 福島学総論」(アカデミア・コンソーシアムふくしま
 清水修二、上遠野和村、西崎伸子、初沢敏生、柴崎直明、吉村仁作、遠藤由美子(奥会津書房)、夏井芳徳(いわき地域学会)、渡辺友彦(白河学研究会)、星一彰(福島県自然保護協会)、平出美穂子(郡山女子大)、菅野俊之(福島学院大学)、高橋充(福島県立博物館)、菅家博昭(地域の調べ方、85ページから90ページに書きました)。
ACFシリーズは1~4まで発刊。2「福島の水」、3「社会変革に生きた女性たち 三瓶孝子と丹野セツ」、4「いわき学をつくる」
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地域に残された記録


■最近、会津藩の梁田家御用公用日記を読んで、大沼郡(南山御蔵入領)での芝居への見物禁止のことを読み、思い出した会津高田の文献を探した。25年前に読んだものでも、思い出せるものなのだと思った。
昭和62年(1987)10月25日発行、週刊朝日百科 日本の歴史80(通巻608号) 近世Ⅱ3 祭りと休み日・若者組と隠居
「若者たちの秩序 村芝居と若者組」国立公文書館員 氏家幹人
会津藩領の大沼郡高田村(現・会津美里町)の田中重好は、天保5年(1834)から万延元年(1860)にかけて暦の余白に極小のカタカナで、日記を書き続けた。
天野家所蔵・田中文庫史料
■17世紀から村に様々な神様が勧請されるが、それは村の新たな休み日(祭礼)を生み出していく、という視点。村休み日は村(集落)の春の総会で決められる。


■2009年3月に発刊された『和光大学現代人間学紀要 第2号』に研究ノート「『継声館日記』にみる近世在郷町の識字状況」を大田素子が書いている。会津高田の田中家の史料のうち、田中慶名の文化11年起の日記の分析である。田中重好、田中種富、田中重好らの記録の経緯も紹介している。→PDFファイル


■会津高田郷土史研究会が設立40周年の記念出版の2010年3月に発刊した『櫻農栞 市之巻・駅之巻』も田中文庫「高田郷頭田中家文庫」からのものです。
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