■千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館編『生業から見る日本史~新しい歴史学の射程』(2008年3月刊、吉川弘文館)は、2005年からの共同研究の中間報告として2006年11月18日に第56回歴博フォーラム「新しい歴史学と生業~なぜ生業概念が必要か」の報告集である。
自然や環境の地球的規模での有限性がはっきりと認識されるなかで、自然と社会を調和させてきた前近代の民衆がもつ知の体系を再検討することが今、もとめられている。日々の生活のなかで生き抜くための生産物だけを自然から秩序だてて獲得してきた民衆知の世界が存在した。浪費や富のための拡大生産を自主規制してきた世界観が存在した(井原氏まえがきより)。
66ページから野本寛一氏が「生業民俗研究のゆくえ」として生業複合について述べている。会津学に寄稿していただいた会津桐や三島町の農林業のこと、また昭和村の苧麻(からむし)についても言及している。野本氏は69ページで、「朝倉奈保子の「苧の道」(『会津学』第二号、二〇〇六年)は、カラムシの生産と流通に関する貴重な調査報告として注目される」としている。
また、新しい動きとして、川野和昭の「竹の焼畑と水~栽培と跡地の再生と水」(『季刊東北学』第2号、二〇〇五年)などもアジア的視野のなかで焼畑を紹介している、と評価している。
川野氏は9月5日~6日の会津学夏季講座の主要な講演者の一人で、鹿児島からアジアに広がる竹の文化について講演が予定されている。